有栖川有栖

2013年05月23日

1



有栖川有栖の『幻坂』を読みました。
【真言坂】【源聖寺坂】【口縄坂】【愛染坂】【清水坂】【天神坂】【逢坂】・・・
これら『天王寺七坂(大阪七坂)』と呼ばれる7つの坂、それぞれが舞台のショートストーリ(+番外編2つ)です。
どれも幻想的でちょっとだけ怖いお話。ジャンル的には怪談小説と言っていいのかな。でも恐ろしさに重点を置くことなくどれも情緒あるストーリーとなっています。

読んでいて私は、気になる言葉に出会いました。
それは「愛染(あいぜん)さんパラパラ」
言うまでもなく『愛染坂』の一編に出てくる言葉です。
愛染坂で出会った男女。でもお互い連絡先も聞かずに別れてしまう。それを聞いた男の叔父が呆れたように言います。

「きみな、愛染さんパラパラいうのを知らんのか? (中略)あのな、愛染祭りていうのは、6月30日から7月2日まで。梅雨のさなかやろ。たいてい3日のうちの何日かは雨に降られる。これが愛染さんパラパラや。男女でお参りして、行きか帰りに愛染さんパラパラに遭うたら、2人は幸せになれる。ま、そういうこっちゃ。」

・・・天気が良くない中、参ってくれたカップルに対する粋な計らいということらしいです。素敵ですよね、こういうの(^_^)ニコニコ  
私は初めて聞いたけど、大阪の人にとってはメジャーな言葉なのかしら?? 色っぽいわぁ   「あいぜんぱらぱら」という語感の良さも手伝い、私はすっかり気に入ってしまいました(笑) 
ちなみに男女は再会を果たし、東京で共に暮らし始めます。しかし男(作家)はスランプ。女(作家志望)は新人賞を獲り売れっ子に・・・そして、悲劇的な最期を迎えます  ま、ネタばらしはそこまでにし、余韻の残るいい話ですよ。7つの中でも好きな一篇です。

西は京都までしか行ったことがないワタクシ。
大阪というと派手できらびやか、良い意味でも悪い意味でも「雑多」なイメージを持っていました。でもこの本を読むと、大阪にもこういう場所があるんだな、歴史があるんだな、と分かります。
大阪に土地勘のある方・天王寺七坂を歩いたことのある方が読んだら、また違った感じ方が出来るかもしれませんね

ちなみに作者はあとがきでこう書いています。
『天王寺七坂という狭いエリアに絞って描いたのは、そここそが私にとって最も大阪らしいと思える土地だから。観光名所も繁華街もなく、大阪に縁がない方にとってはまったく未知の場所だし、大阪市内に住んでいてさっぱり知らない方もいるだろう。しかし、私はその界隈を歩くと、糸より細い声で大阪が歌っているのを微かに聴く。リアリズムを担う街が秘めてきたファンタジーを感じて、「聴こえてるよ」と応えたくなる。古都と呼ばれる間もなく、常に今を生き続ける大阪の鼓動はあまりに強くて、歌声は掻き消されがちだ。懸命に耳を澄ましながら大阪へ「聴こえてるよ」と返答するために書いたのが本書に収めた九編の物語である。』

『糸より細い大阪の声』・・・これまた印象的な言葉ですネ。
本の海に漂うキラキラした言葉たち。
私もまた、「聴こえてるよ」と言いたいです。




                            お後がよろしいようで。




1←読んでいて “地図はないのか?” と思っていたら、巻末付いてました。
ナゼ巻末w 出来たら巻頭に付けといて欲しかったなぁ でも “読んでイメージして” という作者の意図かもしれませんネ。この地図を見ると「真言坂だけ仲間外れみたい」という登場人物のセリフもよく分かります。



















shizutamarakugo at 19:30コメント(2)トラックバック(0) 
猫ムスメ

猫ムスメ